よくボイストレーニングにおいて「舌根を下げろ!」とよく、と言いますか
かなりの頻度で、と言いますか、ほぼそれが常識のように言われていると思います。
実際に僕もボイストレーニングを受けている際には
「舌根が上がってる、高い、下げなさい!」
「指を口に入れていくと条件反射で舌根が下がるから良い」
などど指導を受けましたし
僕の生徒さんでも
「スプーンで舌を上らないように押さえるようにされました」
と聞いたりします(スプーンで下げるも結構定番で聞きます)
しかしながら僕はこの
とにかく「舌根を下げろ!」に疑問を持っていて
僕のレッスンでは一部の方、一部の言い方を除きほぼ言いません
(こちらも後ほど解説します)
まず何故「舌根を下げろ!」に疑問を持ったかというと
○僕自身、 指導で受けたような舌根の下げ方は
歌唱時にほぼしていないよなあ?という感覚が一つ(ポップス、ロックを歌う方どうですか?)
○舌根を下げるように指導をしなさい(これくらい下げるようにと見せてもらう)と
僕が習い、そのように指導し生徒さんも舌根は下がってる結果、
発声の改善には至らない、むしろ良くない事が多かったこと。
トレーナー開始当時は教わった感覚的なメソッドで解決しない事に
自分の力量不足を感じ、力量を埋めるべく
数少ない参考になる発声の専門書や
医学書や解剖図でそもそもの舌や喉頭の構造、動き、役割を勉強し
音声学の研究者の論文なども読み漁っていましたが
そのうちに色々な感覚的ボイトレの矛盾点、そもそも聞いてきた説明がおかしいなど
「従来の感覚的なボイストレーニング」にも疑問を持ち始め
理論的に「理にかなう」トレーニングを考えて
「とにもかくにも舌根を下げろ!」は僕はほぼ言わないというところに至っています。
むしろ僕のレッスンでは「舌根を上げていこうか」という異端児に思われそうな
(最初は生徒さんによく「上げるんですか!?」と驚かれます笑)
ことをしますが、結果声がよく出て生徒さんはビックりすることが多く
いつも「以前ボイトレを他で習っていた時に舌根を下げなさいと言われた」
という解答が返ってきます。
どこにそのズレがあり、僕がどう考えているか
ボーカル、俳優、声を使う人皆さんにかなり大切な部分かと思いますので
そちらを順を追って解説していきます。
まずは僕らが「舌」とはどういう形をしているか
意外とイメージと違うのでリッター解剖学からのイラストで見てみましょう。
赤い線が引いてあるところはこの後の解説でも出てきますので
確認しておいてください。
舌って僕らが鏡で見ている部分は
かなり表面だけなんだという事が分かります。
なんだかイメージ的には
歌川芳員『百種怪談妖物双六』(Wikipediaより)
こんなカラカサ小僧みたいにペロンと
ベロが出てるイメージも持っている方も
多いのではないでしょうか?笑
かなりぶ厚いのが舌ですよね。これを書くと嫌がられるかもですが
牛タンってなんであんな形なの?って思った方もいるのではないでしょうか?
これだけぶ厚いからなんですよね舌って。
あと赤い線が引いてあるのは
上から喉頭蓋(こうとうがい)、舌骨(ぜっこつ)、甲状軟骨(いわゆる喉ボトケ)
声帯ヒダ、気管になります。
さて舌根問題の解説の前に一つ皆さんに
「息の性質」について前提をお話ししておきます。
「息」は「空気」です。
空気は「気圧が高いところから低いところに流れる」
という性質があります。肺から出る息も同じです。
実際にはこのように
「肺から声帯」までと「声帯から口腔内(口の中)」で
気圧が高い→低い
になってると息はスムーズに通っていきます。
東京ドームに行ったことがある方は
帰りに東京ドームの中から外へ出る時に
外へ押し出されるような突風を経験してると思いますが
あれは400tあるドームの屋根を支えるため
絶えずドーム内へ空気を送り込み外よりも
0.3%気圧を高くしているので(TOKYO DOME CITY HPより)
帰りには回転扉の隙間から
東京ドーム内(気圧高い)→外(気圧低い)
と空気が流れていくからです。
山の上にポテチの袋を持っていくと膨らむのは
ポテチを詰めた時に一緒に入った空気の圧が地上よりも山の上は気圧が低くなるのでポテチ袋内の空気圧の方が高くなり外へ出ようとするからです。ポテチの袋が東京ドームの屋根と考えると同じです。
僕らの体の方に戻ります。
さて万が一この気圧が「下と上」で上記の図とは逆転したらどうなるでしょうか?
「声帯の下の空間」よりも「声帯より上の口腔内(口の中)の空間」の気圧が高い場合です。
空気の性質上、流れにくくなります。
肺から声帯まで(声門下)よりも声帯から上の口腔内の気圧が高くなるのは
どういった時かというと
空間が狭くなった時が考えられます。
簡単にいえば10人の空気の分子くんがいるとして
4畳半に10人詰め込むのと20畳に10人入れるとしましょう
4畳半の方はかなり窮屈なんで押し競饅頭状態で
圧は高くなります。20畳の方はまあゆとりがあるので
4畳半に比べるとゆったりとして圧は低くなります。
(あくまで例えです)
口腔内の圧が強くなりすぎて
息が流れにくくなった場合は、なにやら喉が締まったような
声が前に飛ばないような、詰まったような声になります。
結構経験ある方も多いのではないでしょうか?
ここの気圧の話が今回の本題の「とにもかくにも舌根を下げる」のはどうなのか??
というところの大きなポイントになります!!!
そしてこの口腔内気圧には「言葉の発音時の舌の位置」
も大きく関わってきます。
なぜなら「言葉によって舌の位置が変わる、つまり口腔内の気圧も変化する」
ということになりますからね。
さて長くなったので前編はここまでにして
次回後編はいよいよ「とにもかくにも舌根を下げる」にメスを
そして「やりやすい!」とすぐに使える
日本語の発音の仕方で改善できる術を書いてきます。
久々の「読むボイトレコラム」になったので
歌イ賊王に俺はなる!!!的なキャラクターが消えていることに書き終えた今気づきました。。
ボイトレ海を漂流していてついに見つけたアイランド!
の前に文章の系統のブレを無くしなさい自分。。。
文章の方向性の中で漂流しているではないか〜ーー/
それではまた後編で/
アディオスパンパミーヨ/
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