前回の第9聲で「のどに良いか悪いか」という話をしましたが
もう一つ疑問に思ってたことがあります。
酒を飲むと歌が歌いづらくなる(声が出にくくなる)という話です。
お酒を飲むと
1.声が出ない、歌が歌えないタイプ
2.逆に声が出るというタイプ
3.特に変わらないというタイプ
に分かれると思います。
僕の周りにも全タイプがいますが
僕は完全に声が出にくくなるタイプです。
厳密に「声が出にくい」というのは
僕の場合は高い声(ミックスボイス)が本当に出なくなります。
ファルセットは出ます、低い音程も大丈夫です。
僕はG4(ソ4)からミックスボイスなので(通常だとここからE5あたりまで行けます)
ここと、G4に向け声帯を薄くしていくF4,F#4あたりも
薄くしづらくなり、チェストボイスで引き上げるような感じになってしまいます。
高いところが正しく使えなくなるので
トレーナー立場として自分的にはかなりストレスです苦笑
お酒を飲むと声が出づらくなる方は
どんな感じで出なくなりますか?
ぜひ教えてください!!
さて、なぜこのような事が起きるのか
僕の知る発声の仕組みや耳鼻咽喉科や音声学の研究者の方々の
論文を参考に考察したいと思います。
声帯というのは発生時に振動するときの特徴として
声帯内部の血流量は低下をします。
かなり早い振動を生むために血流量の低下をしているようです。
酒を飲むと全身の血流は早く回ります。
結果、通常早い振動数を生むために
声帯内の血流量を低下させることが必要なのに
酒により血流量が増加されそれが妨げになり
早い振動数を作ることができないのではないか?
よって特に早い振動数を必要とする高音はより出にくくなるのではないか。
と思います。
さらに振動しているでは声帯では潤滑ならびに
冷却という作用が必要であると考えられる(参考論文2より)
気道から気道液と呼ばれる分泌液が出され
これが声帯の適度な湿潤性を保つ重要な因子のひとつ
と言うことも言われることから
酒の利尿作用による脱水、乾燥も良い発声を妨げる要因かもしれません。
酒により血管は膨張しますので
声帯もむくみ、これまた声帯の振動がいつもより難しくなると思います。
高音、特にミックスボイスに関しては
声帯は薄くしていくものの、ファルセットのような声門が離れていくではなく
適度に声唇同士が近づき閉鎖をしていく非常に繊細な調整が必要となりますので
むくみは命取りになります。
飲酒時だけでなく、少し喉を使ってしまった時の
軽い声帯炎状態でもやはりミックスボイスが出にくくなってきます。
参考論文1には
声帯振動が始まると,血液流は減少する.甚しい場合には停止する.
減少の程度は動脈より静脈に著しく,また頭声発声時よ
り胸声発声時に著しい.とありました。
ここでいう頭声発声はヘッドボイス(ファルセット)
胸声発声はチェストボイスと考えられますが
より声帯や諸筋肉に繊細な調整を必要とする
ミックスボイスでは特に「胸声発声時に著しい」という
影響が大きいのかもしれません。
あとは飲酒により鼻が詰まる人も多いのではないでしょうか?
これも血流と関係があって
血流が良くなると人は鼻の奥で溜め込み鬱血させます
これにより鼻の奥が膨張し鼻づまりを起こします。
第7聲で書いた「声は空気圧」という話で
鼻腔への空気を通す調整が鼻づまりにより抜けず
かなり空気圧(声)の調整が困難になりますので
これまた歌いづらくなる要因になると思います。
飲酒時の「血流量の上昇する体質」ってのはかなり関係あると思います。
僕は少し(コップ半分程度のビール)飲むだけでも
すぐ顔が真っ赤になるので
アルコールにより血流量はかなり増加していると思います。
もしかすると飲んでも赤くならなかったり酔わない人は
声が出なくなる傾向がゆっくりかもしれません。
もしくは普段歌に関して緊張がある方は
リラックスして出るようになるかもしれませんし
普段の声が少しカスカス目の方は
飲酒により声帯がむくみ逆に声帯が閉じやすくなり
声が出やすくなるということもあるかもしれません。
しかしむくみ、炎症はあると思うので
オススメできることではないかと思います。
あとは単純にお酒を飲む時は人とずっと喋ってるので
(時にザワザワしたりテンション上がったりで大きな声出す)
声帯自体が炎症してしまい出にくくなる事はあると思います
ちょっとここで試しに
僕はレッスン後に声が絶好調な状態で
家で一人酒を飲み(350ml/アルコール5%/全く会話なし)でその後歌ってみる
という実験をしてみました笑
やはり高音は出にくい形でした(笑)
1,2時間会話して飲酒(2.3杯)しながらよりかは
まだ良い気はしましたが。
このように体質や
いろいろな飲酒時の状況、要因が考えられるかと思います。
一度お酒で顔が赤くならない、もしくは強い方と
そうでない方を数名集めて
飲酒前に一度歌い、さらに飲酒後にもう一度歌って
それぞれがどういった傾向が出るか
実験調査の会でも開いてみたいものですね(笑)
今回こちらの論文を参考に考察しました。
参考文献(研究論文)
1.「振動している声帯の循環動態に関する実験的研究」(久留米大学医学部耳鼻咽喉科学教室)
2.「発声時の喉頭潤滑における気道液の動態的研究」(川井田政弘)
「リウマチ性関節炎が原因と考えられた声帯稼働域制限症に対する外科的治療」
(熊井良彦・湯本英二)
僕はあまりしませんがお酒を飲んで歌うと言うことも
コミュニケーションの場になってますし
好きな方も多いです、のどをケアしながら
無理なくぜひ楽しんで頂ければ良いのかと思います。
今回現場からは以上です。
良きボイトレライフを!!!
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