さて、今回から
具体的に理論的なボイトレの内容を紐解く章に
舵を取っていきたいと思います!
まず今回は日本の歌のレッスン、ボイトレ
ミュージシャン同士の会話、アドバイス
ミックスボイスを出す方法などでも
頻繁に言われる「地声・裏声」。
この何気なく誰でも知ってそうな言葉の解釈、イメージが
僕らを漂流という悪夢へ密かに誘うボイトレ海のセイレーンってお話です。
根本的な考え方をしっかり知れば
といいますか欧米や音声学の専門では
普通に言われる事実を知れば、
かなり発声や歌唱、ボイトレが
すっきりして、結果が出しやすくなると思います!
僕は昔、
当たり前と思っていた常識として
しっかりとした声は地声
ファルセットが裏声と思っていました。
なので地声で出せる高さまで出して
きつくなったら裏声にする
と考えていました。
習ってきた中でもそのような認識を告げられていました。
えっ?そうじゃないの???
そもそも「地声、裏声」をはじめ、
現在日本の音楽で良く使われる用語達は
明治期や戦後に
学校での音楽指導をする為に
海外の手引書を訳し生まれ、
そのまま現在も使われているものがほとんどです。
chest register(voice)=胸声=表声・地声
head register(voice)=頭声=裏声
middle register(voice)=頭と胸の間の声=中声
のような形で訳されています
(厳密にはこれらの言葉自体も
当時のどこの国の本を参考にしたかや流派や
訳者の誰がどう解釈し訳したかでもすでに意味の違いが出ています)
上記3つはみなさんも非常に馴染みがあって知っていると思います。
(中声は、ん?と思う方もいるかもです)
が!しかし!
ここに、この言葉に、この先のトレーニングをする上で
発声の仕組みを理解しにくくなってしまい
技術向上の妨げとなってしまう原因となる
ボタンの掛け違いが起きていたりします。
現代日本において「地声」の意味を調べてみると
○スーパー大辞林によると「地声」とは
生まれつきの声。もちまえの声。自然な発声でだす声。
反義語:裏声
○ブリタニカ国際大百科辞典によると地声とは
とのこと。
確かに辞書にもこのような解説が。
「地声=胸声(チェストボイス)」
この通常の多くに認知されている認識の仕方をすると
特に日本語母国語の女性の場合は、
日常話す際に少し高めの音程・声質で話す方が多く
どちらかといえば中声や裏声サイドに極めて近い声で話す方が多い印象なのですが
(しかも日本語は前舌発音が多いので、よりそちらに進行します
前舌発音だと少々高めで固めな音質となり、声帯は閉じ気味になりやすいです。
前舌発音に関してはまた別途記載します)
この件に関して
アメリカ人の音声学研究をされている専門家の方に
「日本語母国語話者と諸外国語話者の声質の差」を確認したことがあるのですが
やはり日本語は少々高く、硬く話す統計と印象が強いとのことでした。
電話に出るときや、敬語を話す際なんか特にわかりやすいと思います。
よってすでに中声、もしくは裏声に極めて近い形の声、
普段話すこの声を=話す声だから=これが地声であり=胸声(チェストボイス)
と思ってる方は多いと思います。
すると、ミックスボイス習得の際に
ミックスボイスとは「地声と裏声の中間」という説明をよく目にすると思いますが
(ミックスボイスに関してもまた別途書きますね)
すでに自身が認識している現在の声が
認識は「胸声」しかし実際は「中声」とここでズレが生まれているので
トレーニングにもズレが生じ習得の足かせとなります。
男性の場合でも
多くは低い音程で話し、胸声で話すことが多いですが
とはいえ、「胸声」と言ってもひとくくりに1種類にできるものではないのです。
少し高めの音程で、胸声の中でも中声よりの方
とても胸声サイドの方。この幅も無数です。
はたまた男性でも中声で話す方や、
ハスキーな方は声帯の一部が閉じ切らず息漏れする傾向があったり
これら全て、普段話す声として=地声=よって胸声、チェストボイス
とするとボタンの掛け違えが起きることは
想像できてきます。
普段話す声=地の声(地声)ですが
地声≠胸声(チェストボイス)
と考えた方が無難かと思うわけですが
ここで重要になってくるのが
声を地声、裏声という二極化の日本の考え方ではなく
僕らが歌うPOPSやROCKやオペラが生まれた
海外では声帯の「厚さ、薄さ」で捉えてくと言う事なんです!
海外では
声帯を4つに分類しています
○SLACK(声帯がたるんでいる)ギターの弦を緩めて少しベロンベロンにしたような状態。低音が出ますよね。
○THICK(声帯が厚く閉じている)
○THIN(声帯が薄く閉じている)
○STIFF(声帯が極めて薄くなり離れていき息が多め)
もちろんこの4つもどこからどこまでがこの状態ということはなく
アメーバのように徐々にSLACK→THICK→THIN→STIFF
と徐々に徐々に変化していく形です。
※久留米大学医学部耳鼻咽喉学科教室・平野実教授
「声帯の層構造を考慮した振動状態の模式的表示」より
上記の図は
声帯を前から見た際の動きですが
左が男性の低いキー、おおよそF2(ファの2番の音)あたりで
10番を見ると声帯が厚め(THICKめ)に閉じているのがわかると思います
右はおおよそD4(レの4番の音)あたりの音程の際
6番あたりを見ると、左の図に比べ
かなり声帯の触れる面が薄い(THINめ)なのがわかるかと思います。
簡単に言えば低い音程から高い音程へは
左の図から右の図の形へと徐々に徐々にジリジリと薄くなっていく形です。
音程ごとにこうしてアメーバのように厚さ、薄さが変わることにより
自然に楽に音程が出せる仕組みです。
もちろん表現として、ある程度の高い音程も厚めに閉じて出すことができますし
逆も然りです。しかしながらその分の負担と技量は必要となります。
基本的にはPOPS,ROCKを歌う上では音程による厚さ、薄さを守ったほうが出しやすいです。
日本では
地声と裏声と考える際に
ここからここまでが地声(全ての音が均一に地声)
(上記図だとずっと左の図のような状態で出していく。)
そしてここからが裏声(その先は均一に裏声)
のように考えていることが多いと思います。
なので高いところに行く際に
低音と同じ感じで出していくので苦しくなったり
急に裏声になって、いわゆる裏返ったり
裏声から下の音程へ行く際にうまく出せず
音を外してしまったりが起きます。
低音から高音は
「徐々に声帯を厚くから薄くしていく」
これがかなり重要な知識となります!!
ちなみにSLACKはいわゆるエッジボイスと言われるものなので
男性でもまあまあ低音域、女性だと結構な低音域まで
降りないと声帯はたるんでこないのです
(宇多田ヒカルさんのFirstLoveの一番低いところとか)
ちなみに僕がレッスンでの経験上ですが
女性が胸声(チェストボイス)になってくるのも
A3あたりから下に降りていくあたりかと思うので(個人差若干あり)
基本的にみなさんが歌う多くの曲ではあまり出てきてない印象です。
日本で当たり前に言われてきた
地声、裏声の認識がかなりずれがあり
それにより実際の歌唱に影響を及ぼし、
上達しにくくなる可能性があることが
見えてきたかと思います。
声を「地声」「裏声」と言う二極化で捉えるのではなく
声帯は「アメーバのように厚くから薄くなっていく
この事を基本ベースに据えて
トレーニングをしていくと随分内容を変わってくると思っております!
それではまた第6聲でお会いしましょう!
日本の音楽用語というセイレーンの姿をしっかり見極め
惑わされぬよう良きボイトレ海の航海を!!
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