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コラムの第3回あたりで
「歌唱王に俺はなるっ!!」 歌が歌えなかったゼンキー・D・ナガツカ少年はボイトレ海に漂流した
という設定をしていたのを思い出しましたが
よっぽどコラムの方向性が漂流してるじゃんという感じの
どうもボーカルコーチしております不肖長塚全です。
さて今回のお題は「鼻腔共鳴」です!
今回のコラムの流れは書いていたら長くなったので
全2回に分けます(した)。
<前半戦 第12聲>
1.「鼻腔共鳴」という言葉の正しい定義(ここがズレてるので言い方が変わる)
2.まずはいきなり結論
第13聲に続く
↓
<後半戦 第13聲に続く>
3.鼻腔使う、使わないでどんな声になるの?(現代音楽での実践音声)
4.鼻腔共鳴した時の音質(周波数)のリアルな解説
5.もう一度まとめ(ジャンルごとの簡単な考察)
●●ボイトレをしたことがある方、もしくはボイトレをネットで勉強したことがある方なら
「鼻腔共鳴」って言葉を聞いたことがあるんじゃないでしょうか?●●
ここで僕がよく生徒さんにも聞かれるのが
「いくつか今までボイトレ行ってるんですが
鼻腔共鳴をよく使ってと教える先生と
鼻にかけないでと教える先生といて結局何が正しいのかわからないです」
ってこと。
この問題をスッキリ書いてみます!
インターネット上の解説ページや動画を見ると
確かに「鼻腔共鳴のやり方」とか「鼻腔共鳴は使わない」など分かれてますね。
そして見てみると「鼻腔共鳴」という言葉の意味が
人によって解釈が違ってます。
これは「鼻腔共鳴」の科学的定義から外れているので問題が起きてるようです。
なのでまずは
1.「鼻腔共鳴」という言葉の正しい定義
です。
多くのボイトレ解説動画、サイトでは
「音声が鼻腔を共鳴させている」ものと
「口蓋や顔面骨など鼻付近が振動している」ものを
両方「鼻腔共鳴」と呼んでいるものが多く見られました。
最初が共鳴、骨は振動なので
2番目は本来「鼻腔共鳴」とは定義されません。
「鼻腔共鳴」という言葉は正しく何を示すかですが
広島大学医学部耳鼻咽喉科学教室 益田 慎さんの書かれた研究論文
「共鳴腔 としての上顎洞の役割に関する実験的研究」から抜粋します。
↓
古くから歌唱においては 「鼻腔共鳴」 は重要視 されてきた。
多くの指導書には「鼻に声を感 じて」 「声を前に出 して」「声を頭で保持して」など
経験上「鼻腔共鳴」を強調 している.
特にイタ リア歌唱法 であ るベルカント唱法は頬に 「声を響かせた」
「鼻腔共鳴」を強 調 した歌唱方法と言える
(抜粋終わり)
まずここで「古くから歌唱において」と言われる
「歌唱」とは声楽や唱歌などを指すと思われるが
それが歌の基本は変わらないとして
手探りでPOP,ROCKを日本で歌おうとした時代のボイトレにおいて
参考にされてPOP、ROCKに持ち込まれていたかと思う。
そもそもクラシックとPOP,ROCKは歌い方が大きく異なるが
昔に持ち込まれたまま受け継がれ
未だにPOP,ROCK用のボイトレで続いていると考えてます。
声楽では自分のマスクに響かせるようにといった
「マスケラに声を乗せて」など言います。
これも一つ鼻腔に共鳴させている感覚と
顔面の骨に振動させている感覚両方なんだと思います。
(僕は声楽はやったことない、できないので経験者や文献での知識に留まります)
骨への振動、もしくは鼻腔閉鎖をしてる状態で
上顎を通じての鼻腔への振動は
これまた先に挙げた論文から抜粋します
↓
骨導音声は発声に伴う顔面骨の振動であり,音声そのものの共鳴現象ではない点である.
こ の こ とについて、すでに颯田は 「附属管腔 のみが音声の共鳴器なり」と言明 してお り
さ らに野村 は 「発声に伴う体壁の共振が口裂より出づ る音声に対 して影響する程度は微小で,第二義的に過 ぎない」)と結論づ けてお り,共鳴 と顔面骨の振動を明確に分離 した.
(抜粋終わり)
つまりは音声そのものの共鳴、
音声(空気)が空間で反響しているものを鼻腔共鳴と定義するわけです。
「鼻腔共鳴」の言葉の定義がわかったところで
次に解説2に入ります。
2.まずはいきなり結論
鼻腔共鳴を使うか、使わないかですが
2019年11月現在のPOP,ROCKのジャンルにおいては
POP,ROCKが生まれた海外英語圏のボーカルコーチ達の中でも
(音声研究者、ボーカルコーチのジョーエスティルさんなど)
鼻腔共鳴はあまり使わずに鼻腔閉鎖をした「TWANG」が主流ではないかということです。
TWANGとは「鼻声」という意味ですが
海外では「鼻声に聴こえるが実際には鼻声でないもの」を【TWANG】と呼び
「鼻から息が出ている本当の鼻声」は【Nasal】と分けています。
(次回の3で実際の音声で解説します)
このTWANGは骨振動という面では鼻あたりにビリビリ振動を感じます。
(これを「鼻腔共鳴」と言っている解説ものは多かったです。)
鼻腔は口蓋帆によって閉鎖されているので息は基本遮断されてます。
それにより口腔内気圧を高くして強い音圧を作るってのがTWANGの技法です。
(もちろん声帯の厚み、仮声帯、舌の位置によるAESの位置も重要ですが今回は省きます)
長唄等の邦楽やクラシック、昭和の時代の歌謡曲
より低音の倍音を生かした深みある声を出すときは
鼻腔共鳴を使うんではないかなと
要はジャンルと、どんな声を求めるかによると考えてます。
よくボイトレ動画の解説にある
「鼻腔共鳴すると抜けが良くなる」「ミックスボイスに鼻腔共鳴を使う」は
口蓋や顔面骨の振動を「鼻腔共鳴」と説明しているので
(音声学的にはそれは音声の共鳴ではなく鼻腔共鳴ではない)
口蓋から伝導して顔面骨が振動してるという感覚ならば
そのように言えると思いますが
本来の鼻腔共鳴をさせると、低音の周波数帯が足されて
抜け感が減ったマイルドな声になります。
声楽でいうマスケラーノで鼻腔共鳴させてマスクに声を感じるというのと
口蓋から伝導して顔面骨が振動しているのが
ごっちゃになってそちらも鼻腔共鳴という解釈が生まれてしまっているのかもしれませんね。
鼻の話なのでオマケに「鼻音」(ナ行とかマ行とか)ですが
前の音→鼻に息が抜ける→次の音
と音響的になります。
●鼻母音→口腔と鼻腔の両方を使って共鳴させて出す音
●鼻子音:鼻母音から口腔からの放射をなくしたもの
となっております。
さてひとまずここまでのまとめと次回、後半戦の予習です。
●まとめ
鼻腔共鳴は音声そのものの共鳴を指す
口蓋から骨伝導で鼻が響いてる感じがするのはあくまで振動であり
鼻腔共鳴とは定義しない。
●次回の予習です
定義がわかったところで、次回は息の通り道の話から鼻腔共鳴を見ていきます。
歌唱時に考えられる空気=息=音声の通り道のパターンを紹介しておきます
1.口から多く息(声)が出て行く
2.鼻腔閉鎖をしてほとんど鼻には息はいかず口から出る。(TWANGという技術)
3.口蓋帆(のどちんこのところ)を下げて鼻に息を多く持っていく
(度合いは色々変えられますが分かりやすく分けました)
この3番目の鼻から息が出ている、通過するときに
鼻腔共鳴は起きます。
やりすぎるといわゆる「鼻声」になります。
この3つを次回は実際の音声で聴き比べながら
解説していきたいと思います。
「曖昧感覚だけのボイトレにSAY NO!」
セイ!ノーオー(ノーオ!)
セイ!ノッノッノー(セイ!ノッノッノー)
セイ!ノッノッノッノッノー(セイ!ノッノッノッノッノー)
※コールアンドレスポンス風(すみません)
それではまた次回
アディオスパンパミーヨ✴︎
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