歌を歌う人、声を使う人なら必ずと言って考えたり
聞いたりしたことのある
「○○は声・のどにいい/悪い」ですが
これ結構、曖昧じゃないですか?
都市伝説みたいな雰囲気ありませんか?笑
「酒焼けして声がガラガラ」「強いアルコールはそりゃ焼ける」
「豚骨ラーメン食べると声が出しやすい」
というけれど、そもそも液体や食べ物って声帯にかからなくないか??
(当たり前だけど気管じゃなく食道に流れるから)
解説していきましょう。
まずは「のどにいい/悪い」の
この「のど」というワードの指す場所をしっかり確認しましょう/
「のど」っていう時には2つの違う場所をそれぞれ示します。
漢字は2種類「咽」と「喉」(読みは同じくノド)
★.医者に行って「口開けて見せてくださーい」という意味で使うのど=【咽頭】
☆.医者に行って「スコープで見ておきましょう」と鼻からスコープ入れて見るのど=【喉頭】
図でもう少し詳しく確認しておきましょう。
(リッター解剖学アトラスより)
<図1>
図の青で示した
1.上咽頭
2.中咽頭
3.下咽頭
を合わせて【咽頭】
図の緑で示した
4.が【喉頭】です。
「のど」と同じ読みでも場所により漢字が変わります。
耳鼻咽喉科の咽喉は
「咽頭」 と「喉頭」を合わせたものです。
なので本来「喉が痛い」と書いたら
「喉頭が痛い」を示すことになりますね。
「のどにいい/悪い」がどこに対してかが
しっかり確認できたと思います。
しかしなんとなく普段「のどにいい?悪い?」
っていう時って「【喉】にいい?悪い?」
というニュアンスで使ってる気がしますよね。
そこで疑問に思うのが
【喉頭】の方の「のど」ですが
飲み物、食べ物を口に含んでからの流れですが
<図2>
当然4番の声帯のある気管にはいかないですよね笑
たまに気管に入ってしまいむせて大変なことになる事もありますが、そうなってしまいます。声帯は間違えて気管側に入ったものを
跳ね返す門番の役目もしています。
歳を重ねていくと間違えて気管に入ってしまった時に声帯の筋肉の衰えで、跳ね返せずに声帯を通過してしまい、肺に入り肺炎を引き起こしてしまい非常に危険であり、高齢者の嚥下障害は課題となっいます。
ここのように通常は図の3番、左側の食道へ流れていきます。
物を飲み込む際には喉頭(喉仏)が上がります(喉仏を触りながら試してみてください)
この時に4番上部の斜めにある「喉頭蓋」という蓋の方へ喉頭が上がり、結果この蓋が閉じる形となり気管への道を閉ざします。
物が気管の後ろの食道へ流れていく様子が次の写真でもわかります。
<図3>
YouTube-Life looks really different through an MRI machine(Vox)より
こうなってくると
口の中や咽頭はまだしも
声帯には水や酒や蜂蜜や豚骨ラーメンはかかることがないので
やはり意味がないんじゃないか?
消化されて体を巡ったあとに影響はあるかもだが??
ってなりますよね。
さてそこで
もう少しこの食べ物、飲み物が流れていく構造の部分を明確に見てみましょう。
次の図は喉頭(喉仏)を後頭部側(食道)から見た図です。
<図4>
ホースの口のように見えるのが声帯(その先の気管)につながる入り口で
指をさしてる所の中辺りに声帯を動かす筋肉があります。
ここをさらに剥き出しにした解剖図だと
<図5>
このようになっています。
上の口が先ほど見た声帯(気管)へ向かう入り口
下が食道です(図では切断されてます)
こうなっているんですね〜
指で指している筋肉は声帯を動かすのに直接的に関わる重要な筋肉で
「(横および斜)披裂筋(ヒレツキン)」その下が
「後輪状披裂筋(コウリンジョウヒレツキン)」です。
この
声帯を上から見た図だとここになります
実際には<図4>で見たように
この筋肉は剥き出しではなく食道の壁があるわけです。
食べ物、飲み物は
「喉頭」の方の「のど」に関しては当然声帯にはかからない、が
声帯を動かす筋肉群の側壁は通っていきます。
かなり声帯を直接動かす筋肉の近く(側面)を通っていきますね。
故にこの喉頭裏あたりの食道の壁が炎症すると
声帯を動かす披裂筋にも影響はありそうです。
実際に飲酒後は声帯自体にはさほど炎症は見られないものの
披裂筋辺りに炎症やむくみは見られるようです。
さてあとは水、蜂蜜、オリーブオイル、酒etcの成分が
体や粘膜にどう影響するかになってきそうです。
よく話題に出る蜂蜜(マヌカハニー)には殺菌作用、
オリーブオイルには消炎効果があるとは言われています。
オリーブオイルの消炎効果に関しては
オリーブオイルののどへの影響(キリン生活文化研究所)
https://www.kirin.co.jp/csv/food-life/think/episode/vol18-1.html
こちらに興味深い記事がありました。
ちなみに声帯や喉頭内、喉頭付近が炎症し腫れたり、むくんでたりすると
息が通りづらかったり、声帯がうまく振動しづらくなります。
咽頭は咽頭炎などで腫れていると口腔内の空間が狭くなるので
こちらも息は通りづらいですし
いつもより声は籠ってきます(扁桃炎の時など特に)
ただ、蜂蜜やオリーブオイルを飲めば
声が出しやすくなる、嗄れた声が出る、炎症がすぐ治る
という即効性はないのではないかと思います。
(声が不調なライブ当日になど)
水よりは粘膜についたものが流れにくいので
潤いの持続を感じられるという事を読んだことがあるのですが
今知る限りはその形ほどかなと感じています。
すでに「のど」「声」が不調な場合は医師に見せて判断を仰ぐのが良いでしょう。
あくまでそうなるだいぶ前の日常のケアに当たるかと思います。
ちなみに僕は毎日レッスンで数時間と声を連続で出すことが多いですが
そのようなケアはしておらず
ケアは風邪をひかないようにすること
その為に根本的なところですが免疫を落とさない
(筋力トレーニング、体のメンテナンス、ストレスをなるべく溜めない、体を冷やさない、乾燥させない)をしています。
酒に関しては量だったりうるさい場所は避けたり(大声で話すことになるので)
注意はしていて、とにかく深酒はしなくなりました(トレーナー以前は何も考えずにしてました笑)
食べ物、飲み物が「のどに良い/悪い」というこだわりの前に
根本的な生活習慣の改善や、トレーニング、メンテナンスがあることがまず大事です。
その上で更にのどの日々のケアという事を考えて
ぜひ「のど」を大切にしてもらえたらと思います/
でわまた次回。
次回予告「第10聲 お酒を飲むと何で高音が出なくなるんダーーーー」
を書いていきます。
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